2018年09月02日

稲尾教彦さんと「舟」

秋の「おはなしペチカ」で語らせていただきます
長編詩『舟』の作者・稲尾教彦さんが
 
この詩への想いを綴ってくださいましたので
ご紹介させていただきます。
  
ある日、ふいに、
わたしの元へと流れついた、舟。
 
それは、15年ほど前に
稲尾さんの元に流れついていた舟・・・
 
今、この舟が導いてくださっている
すべてのご縁。
 
驚きと感謝と不思議な感覚のなかで
可能な限りその精神に寄り添えることを
願っています。
 
◆ 10/8(月・祝)
おはなしペチカ .006 詩をわかちあう秋
『舟』〜 本当の幸せのある彼方へ 〜

 
 
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***
 
この秋、奈良で10月8日に、拙作の詩による、
言語造形の公演をする運びとなりました。
語りは、言語造形家の諏訪千晴さんです。
 
今から15年近く前に書いた作品であります。
この作品を書いたときのことが、いまでも、
鮮明です。
作品についてすこし、お話させてください。
 
東京に住んでいる頃でありました。
ゆえあって、
京都のとある山に登りたい、登らねばならない、
という想いがつのり、
2月の寒い中、数日山篭りして、
その後に書きはじめたのです。
 
 
 ほんたうの幸い、
 
 永遠との別離、
 
 過去の一切とそれを観ると云うこと

 
 
わたし自身の中に見つめるもの多くあり、
雪の降る、神聖なる山が
それを見せてくれたのです。
 
ほんとうの幸せがあると信じていました。
信じるということばは
間違っているかもしれません。
どこかで、それが存在すると「解っていた」
という方が正しい気がします。
 
ところが、ほんとうの幸せを想い、書き始めると、
世界と他人である、という
どうしようもない深淵が現われたのです。
 
「舟」は、その深淵をわたってゆくものです。
 
   *
  
わたしのこころの底に沈んでいる、
願いのようなものがありました。
 
それは、深淵を渡る、ということです。
 
わたしは、この長編詩を書きながら、
その深淵の輪郭、そして己の願いが
明らかになってゆくことを見ました。
 
その実、後半は、
もうボロボロに泣きながら書いたのです。
 
それは、真実、わたしのこころの声でした。
書くことを通して、わたしは、わたしの、
真の想いを知ったのです。
 
詩は、
客観的なもの、寄る辺なきものであるがゆえに、
私的なものでもあります。
 
私的なものであるがゆえに
他者に通ずるものであるかと、
不安でもありましたが
 
この詩を、
幾人かの友人に読んでもらう機会がありました。
わたしが語り、
これを聴いてもらったこともありました。
 
それによって、この詩のもつ詩情と事柄が、
多くの人の胸を打つことを知りました。
 
それは、わたしの中に孤独に響いていたものが、
他者にも鳴り響いていたことなのだと知った
出来事でした。
 
読後、ある友人は、
感想を話しながらしみじみと涙を流しました。
 
「失った母が、この詩の、
 この部分にある通りに自分に浮かんだのです」と。
 
   *
 
この詩の中で
あらゆるものが失われ、過ぎ去ってゆきます。
 
  
 何もかもが消え去れば
  
 私は泣くかもしれない
 
 私は叫ぶかもしれない
 
 でも、私はいつもそうしてきた
 
 私はもう慣れっこよ

 
 
その中でも、永遠なるものへ
舟は漕ぎ出そうとするのです。
 
失われた永遠なるものの手触り、それは、
母なるもの、ほんとうの幸い、のようなもの。
 
 
詩中の若い女。
その姿は、手の届かないものへ、
手を伸ばし続ける姿かもしれません。
 
しかし、その姿を、美しいと、わたしは思う。
 
 
この作品を、大阪の言語造形家、
諏訪千晴さんが語ってくださいます。
 
この詩を、
言語造形を通して取り組むということは
まさに全身全霊をもって向うことになることが、
目に浮かびます。
背の底から、噛み潰すことのできない叫びが
立ち上がる。
 
 
千晴さんという人を知っているから、
その真っすぐな人となりを知っているから、
ぜひにと思い、語っていただけませんかと、
わたしからお願いしました。
 
ようやく、この舟が、
解き放たれるときがきました。
 
演出は、諏訪 耕志 さん。音楽は 足利智子 さん。
会場は奈良の平城京近く「 想芸館 」という
非常に美しいギャラリーです。
 
考えられうる、
いやそれ以上の人と場所の巡り会わせを戴いて、
 
この詩が、旅立つときが来たのだと、
心底震える気持ちでいます。
 
きっと、この詩は、
このときを待っていたのです。
 
ぜひ、
おはなしペチカ.006「舟」にお越しください。
こころより、お待ちしています。
 
稲尾教彦

***


● 次回は 9/9(日)
大阪 「日本の言靈を味わうクラス」


◆ 10/8(月・祝)おはなしペチカ .006
詩をわかちあう秋 『舟』 〜 本当の幸せのある彼方へ 〜



posted by 千晴 at 10:40 | Comment(0) | 言語造形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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